実在した男をモデルに「社会」と「人間」の今をえぐる問題作。
下町の片隅で暮らす三上は、見た目は強面でカっと頭に血が上りやすいが、まっすぐで優しく、困ってる人を放っておけない男。しかし彼は、人生の大大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯だった。
社会のレールから外れながらも、何とかまっとうに生きようと悪戦苦闘する三上に、若手テレビマンの津乃田と吉澤が番組のネタにしようとすり寄って来る。
やがて三上の壮絶な過去と現在の姿を追ううちに、津乃田は思いもよらないものを目撃していく…
『ゆれる』『ディア・ドクター』などで数多くの映画賞を受賞し、今や日本映画界で最も新作が待ち望まれる監督のひとりとなった西川美和。これまで一貫して自身の原案、オリジナル脚本に基づく作品を発表してきた西川監督が、直木賞作家・佐木隆三のノンフィクション小説「身分帳」にほれ込み、長編映画としては初の原作ものに挑んだ。
小説の時代設定を現代に置き換え、実在の人物をモデルとした主人公の数奇な人生を通じて、人間の愛おしさや痛々しさ、社会の光と影をあぶりだす問題作である。