狂気と正気は紙一重。“正義“という化けの皮を剥がれた人間の姿ー今から数十年前に起きた衝撃的な事件。夫を殺害し、戸籍を引き継いだ男と夫婦生活を送る女が、新しい男と結ばれるためさらに殺人を繰り返した〈配偶者入れ替え連続殺人事件〉は、世間を震撼させた――。そんな実話にもとづく舞台劇の制作が決まり、殺害される主人公役に抜擢されたのは、演技経験のない夛田だった。しかし役柄に自分の経験を重ね、深くのめり込んでいった夛田は、やがて虚構と現実の境界を見失い、ついに演じる人物と一体化してしまう。そして夛田の妄想は、舞台の関係者たちを巻き込み、すべてをぶち壊しにする。「おかしいのはお前たちだ! 僕は本当のことを言っているだけだ!」舞台の本番が間近に迫る中、夛田は制御不能に陥り、物語は予期せぬラストへ。何が本当で、何が嘘なのか? 虚実が混ざり合う、恐ろしくも滑稽な舞台の幕が、今切って落とされる。